代々木上原行きの千代田線が遅れている。具合が悪くなった人の介抱をしているらしい。到着直前で数分止まる。ホームに下りると、担架に女の人が乗せられている。白いエナメルブーツと茶色く長い髪だけが見える。唯で珈琲。西原図書館。夕方、幡ヶ谷から神保町へ。歩いて近美へ。草間彌生――永遠の現在展。1939年のスケッチ。鏡の中に無数の蛍がいる。何か監視員に説教している館の人がいる。クライマックスになる展示が続く場所にこれはつらい。車内アナウンスがくどい田園都市線みたいだ。改装後の近美に来ると感じるちぐはぐとした気分になる。6年でこのざまだ。何も残っていない。表参道ロアのマスターも消えてしまった。カニクリームコロッケも。電話番号は別の場所に割り当てられている。木村伊兵衛展で、借りていた本に載っていた写真を見る。所蔵品ギャラリー「近代日本の美術」。瑛九。茶碗の底にあった吉原治良。靉嘔さんは浦和にいらしていた。クリストフシャルルを前に見たのは9年ぶりだと思い出す。もう空き部屋を片付けてもいいだろう。他人の前で罵倒されることにも慣れた。高松次郎の顔はどっちだっけ？村上友晴を見る。この点々をひとつずつ乗せていくんです。千葉市美を見逃したことに気がつく。工芸館に寄っていられない。中野に行く。新宿から湘南新宿ラインで帰る。
